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How to design a good survey (guide)/ja: Difference between revisions

From LimeSurvey Manual

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'''よいアンケートを作るための簡単なガイド'''
'''よいアンケートを作るための簡単なガイド'''


LimeSurveyでは、アンケートを素早く簡単に行うことができますが、ひどいアンケートを作ることも非常に簡単ということでもあります。
LimeSurvey を使えば、アンケートをすばやく簡単に作成できます。残念ながら、そのせいで悪いアンケートを作るのも、とても簡単になってしまいます。


このページでは、参加者に負担をかけずに有益な回答を得るための簡単なガイダンスを提供します。
このページには、回答者が簡単に完了できるだけでなく、集計する側が意味のある回答を得られるアンケートをまとめるための簡単なガイドを記載しています。


こちらのブログ[http://www.limesurvey-consulting.com/survey-design-tips-tricks "Survey design tips & tricks(アンケートのデザインのコツと小技)"]にも有益な情報があります。
ブログ、[https://www.survey-consulting.com/survey-design-tips-tricks 「Survey design tips & tricks(アンケートデザインのコツと技)」]では、この他のとても役に立つ情報を掲載しています。


<span id="Before_Making_a_Survey"></span>
=アンケートを作る前に=
=アンケートを作る前に=


アンケートを作る前に、そもそもアンケートをすることが適切な方法なのかを含め、考えておくべきことがいくつかあります。
最初にいくつか質問します。どんなアンケートでも作りはじめる前に考えておいてほしいことです。そもそもアンケートが適切な方法なのかも含めて。


<u>アンケートで何を知りたいのでしょうか?</u>
<u>アンケートで本当に知りたいことは何ですか?</u>


この質問に答えたら、次のことを考慮します。
この質問に答えた上で、次の点について考えてください。
*'''アンケートは調査に必要な情報を得ることができるでしょうか?'''
*'''アンケートで調査に必要な情報を得られるか?'''
*'''アンケートを完了させるには誰に聞くのがよいでしょうか?'''
*'''どんな人物にアンケートに回答してもらうのが適切か?'''
*'''聞くべき相手にたどり着いたかどのように確認できるでしょうか?'''
*'''適切な人たちにどうすればコンタクトできるか?'''
*'''(得られた情報がを確で有用なものにするため)アンケートに回答する人が質問を完全に理解してもらう最善の方法は何でしょうか?'''
*'''参加者がアンケートの質問を完璧に理解したうえで回答を完了するための最適な方法は?(得た情報が正確・有用であるために)'''
*'''データが収集されたら、(データ分析のために)どのような統計手法を使用するか、または使用すべきか?'''
*'''(データ分析の)統計的手法について、収集したデータにどれを用いたい、もしくは用いる必要があるか?'''




これらは、LimeSurveyを使うことが適切なのかを決めるにあたりクリアにすべきことです。
こうした質問・確認は、LimeSurvey が最適な道具かどうかを判断する際にはっきりさせておくべき点のほんの一部です。


LimeSurveyは、しっかりとした構成があり(アンケートを始める前に聞きたいことがわかっている)、標準化され(誰もが同じ内容に答える)、(特に数字やあらかじめ選択肢が決められた質問について)定量的なアンケートをオンラインで行うのに適しています。
完全に構造化されたアンケート(面談をはじめる前に尋ねるべき質問がすべてわかっている)、標準化されたアンケート(全員がほぼ同じ質問を受ける)、ほとんど定量的なアンケート(質問項目が主に数字や、事前に選択肢が定まったもの)…LimeSurvey はこうしたアンケートをオンラインで収集するのに最適です。




これに当てはまらない場合ももちろんあるでしょう。LimeSurveyを電話インタビューの代わりにすることもできます。テキストによる自由回答のように、定性的なデータを集めることもできます。
もちろん、ある程度はこの限りではありません。 LimeSurvey はいくつかの種類の電話での聞き取りの回答を収集するのにも使えます。 LimeSurvey で記述型の質問などの定性的なデータを収集することもできます。


ただ、別の調査方法の方が適切だと判断することもあるでしょう。
しかし、ある時点で、他の調査方法の方が適しているという結論になるかもしれません。


==アンケートを組み立てる==
<span id="Structuring_a_Questionnaire"></span>
==アンケートの構成==


質問の順番、グルーピングなどを決めるには、いくつか考慮すべき点があります。
質問の順序をどうするか、どう質問をグループ化するかを決めるには、考えるべき点があります。


可能なら、すべての参加者が答えやすい質問から始めましょう。聞きたい参加者を選別するための質問がよく使われます(選別には、[[Setting conditions/ja|条件]][[Survey quotas/ja|クォータ]]を使います)。
なるべく、はじめは答えるのが簡単で、参加者全員が答えるのに不快と感じない質問から尋ねます。こうした質問は、よくスクリーニング(ふるい分け)の質問として使われます。つまり、適切な人に回答してもらうための確認として用いる質問です(こうしたスクリーニングの質問を取り扱うには、[[条件の設定|条件]] [[調査の割り当て|割り当て]] のいずれか、または両方を使います)。


このような質問をアンケートの始めに入れると、アンケート途中での離脱が少なくなるかもしれません。このような導入/選別用の質問に一旦回答すると、途中でやめにくいといわれているからです。
最初にこの種の質問をすると、参加者がアンケートの回答を完了する前に離れてしまうのを防ぐことができます。こうした導入・スクリーニングの質問に答える労力をすでに費やしてしまったことで、多くの人は作業を中断する可能性が低くなるからです。


'''例''':
'''例''':
<syntaxhighlight lang="php">次のフルーツのうち、どれが好きですか。
<syntaxhighlight lang="php">次のくだもののうち、どれが好きですか?
#りんご   ()
#りんご()
#バナナ  ()
#バナナ ()
#チェリー ()
#さくらんぼ ()


(択一)
(単一回答)


参加者が''チェリー''と答えた場合、条件を用いてチェリーについて更に聞くことができます。
条件を使うと、参加者が「さくらんぼ」を選択したら、次にさくらんぼについての質問を表示するように設定できます。


なぜチェリーが好きなのですか?
なぜ、さくらんぼが好きなのですか?
#おいしいから
#おいしいから
#色が好きだから
#色が大好きだから
#ヘルシーだから
#健康的だから
#ジューシーだから
#みずみずしいから
#チェリーパイが好きだから
#チェリーパイが大好きだから


(複数選択(択一も可))
(複数回答――正確なデータが必要であれば単一回答――の質問)


どのくらいチェリーが好きですか?
さくらんぼは、どのくらい好きですか?
#1) どのフルーツよりも好き
#1) 他のくだものほど好きではない
#2) とても好き
#2) 他のくだものよりも好き
#3) 好きなフルーツの一つ
#3) 大好きなくだものの1つ!
#4) チェリーを愛している
#4) さくらんぼが大好きだ~っ!!!


(択一)
(単一回答)


チェリー関連のレシピを知っていますか?
さくらんぼを使ったレシピを何か知っていますか?


[テキスト]
[記述]


</syntaxhighlight>
</syntaxhighlight>


上記の例は、メインとなる質問の前の導入として簡単な質問を配置する例です。
上記は、つづくメインの質問への導入として配置する簡単な質問の例です。


その目的は、チェリー、りんご、バナナを使ったレシピを集めることにあります。
目的は、さくらんぼ、りんご、バナナを使ったレシピを集めることにあります。


一方で、難しい質問があるときは、質問ごとにページを改めたり、質問グループを使用したり、そのような質問を最後に持っていったりすることを考えてもいいかもしれません。これにより、もし参加者がアンケートを中断しても、それまで行った回答は保存されます。
一方、ハードな質問を尋ねなければならない場合は、質問や質問グループごとにページを改めたり、最後にそのような質問をすることを考えてもいいかもしれません。こうすれば、もし参加者がアンケートを完了しなかったとしても、少なくともそれまでの回答は保存されます。


構成に関連して他に考慮すべき点としては、アンケートそのものでバイアスがかからないようにする必要があります。
構成について考えるべきその他の点 - アンケート自体がもたらすバイアス(先入観や刷り込み)を避けること。


例えば、マーケット調査において、回答を誘導するかどうかについて考慮します。
たとえば市場調査では、補助なしの質問と補助ありの質問を必要とする概念があります。


次の例は、回答を誘導しない質問の仕方です。
補助なしの質問の例は次のとおり :


<syntaxhighlight lang="php">"あなたが知っているチョコレートのブランドは何ですか?"
<syntaxhighlight lang="php">「あなたが知っているチョコレートのブランドは何ですか?」


(未記入のテキストボックス)</syntaxhighlight>
(つづいて空白のテキストボックス)</syntaxhighlight>


次の例は、回答を誘導する質問です。
以下は、補助ありの質問の例 :


<syntaxhighlight lang="php"> "次のチョコレートのブランドのうち、あなたが知っている物はどれですか?"
<syntaxhighlight lang="php">「次のチョコレートのブランドのうち知っているのはどれですか?」


(ブランドのリスト(複数選択))</syntaxhighlight>
(つづいてブランドのリスト・複数回答)</syntaxhighlight>


上述のとおり、上記2つの質問(誘導的質問・非誘導的質問)を同じアンケートの中に入れる場合は、それぞれを別のページに配置し、非誘導的な質問を先にするべきです。誘導的な質問を非誘導的な質問の前にしてしまうと、意図せずとも参加者の回答に影響を与え、結果が無効になってしまうかもしれません。
前述したように、両方のタイプの質問(補助ありと補助なし) を同じアンケートに含めることを選んだ場合は、両者を必ず別のページに配置し、補助なしの質問を補助ありの質問の前に配置しなくてはなりません。補助ありの質問を補助なしの質問の前に置くと、参加者の回答に無意識に影響を与え、結果が無効になるかもしれません。


==個々の質問==
<span id="Individual_Questions"></span>
==独立した質問==


質問は、何かを示唆するようなものであってはなりません。"LimeSurveyについてどのような意見をお持ちですか?"は問題ありません(示唆的でない)が、"LimeSurveyは本当に素晴らしいツールだと思いませんか?"は示唆的な質問となります。
質問は示唆的であってはなりません。「LimeSurveyについてどう思いますか?」は、承認できる(示唆的ではない)質問です。一方、「LimeSurvey が本当にすばらしいツールであることに同意しませんか?」は示唆的な質問です。


質問の仕方に関するその他の例:
質問の表現に関するその他の例と提案 :


次のような聞き方をすると、「寄付する」と答えがちです。
次のように質問すると、多くの人は寄付に「はい」と答えるかもしれません:
* ''自然を愛していますか''
* 「自然は好きですか?」
* ''川を保護するため、寄付をしますか''
* 「川を守るために寄付しませんか?」




一方、次のような聞き方をすると、「寄付しない」と答えるでしょう。
次のように質問すると、多くの人はおそらく「いいえ」と答えるでしょう :
* ''お金がないと困りますか''
* 「お金が足りなくて悩んでいますか?」
* ''川を保護するため、寄付をしますか''
* 「川を守るために寄付しませんか?」




適切な回答となるよう、質問の順番を決めましょう。
適切な回答を求めるために、質問の順序を次のようにします :
*当たり障りのないものが先、敏感なものは後に
*当たり障りのないものからセンシティブ(敏感)なものへ
*一般的なものが先、詳しいものは後に
*一般的なものからより具体的なものへ
*事実を聞く質問が先、意見を聞く質問は後に
*事実についての質問から意見を聞く質問へ


また、質問には次のようなものがあります。
また、アンケートの質問は以下の通り大別できます :
*'''オープン質問''' (回答者が自分の言葉で回答できる)
*'''自由回答''' (回答者が自分の言葉で回答)
*'''クローズ質問''' (選択肢の中から選択する)
*'''限定回答''' (限られた数の選択肢から選ぶ)


クローズ質問は、後で分析しやすくなりますが、本当に望んでいる回答を得られないかもしれません。
限定回答は、分析がはるかに簡単ですが、回答者が本当に望む選択肢を用意できないかもしれません。


例: "''好きな色は何ですか?''"
例 : 「好きな色は何ですか?」


'''オープン質問''': "ダークフクシャ色"と答える人がいるかもしれません。結果に"ダークフクシャ色"というカテゴリーを作らなければならなくなります。
'''自由回答''': 「ダークフューシャ」と答える人がいるかもしれません。結果に「ダークフューシャ」の分類を作らなければなりません。


'''クローズ質問''': 12種類の色から選ばせれば集計は楽ですが、回答者が本当に好きな色を選ぶことができないかもしれません。
'''限定回答''': 12種類の色から選ばせれば集計は楽です。しかし、回答者が本当に好きな色を選べないかもしれません。


各々の質問を慎重に検討し、オープン質問かクローズ質問かを決定してください。回答についてより深く理解する必要がある場合は、オープン質問を使用します。そうでない場合は、クローズ質問を使用することができます。
各々の質問を慎重に検討し、自由回答にするか、限定回答にするかを決定します。回答についてより深い洞察が必要な場合は、自由回答の質問を使用してください。そうでない場合は、限定回答の質問を使用します。


例(オープン質問): "''川をきれいにするもっともよい方法は何だと思いますか''?"
例(自由回答) : 「川をきれいにする最善の方法は何だと思いますか?」


'''オープン質問'''にしましょう。回答を表やグラフにはしにくくなるかもしれませんが、川や環境をきれいにすることについて、人々の気持ちや考えを深く理解し、レポートに直接引用することができるかもしれません。
「自由回答」にする : 回答を表やグラフにまとめるのは簡単ではないでしょう。しかし、川や環境の浄化に対する人びとの感情や考えについて深い洞察が得られ、レポートに直接引用できるかもしれません。


例(クローズ質問): "''どのぐらいの頻度で川に行きますか?''"
例(限定回答) : 「どのくらいの頻度で川に行きますか?」


以下の選択肢を作って'''クローズ質問'''にしましょう。
次の選択肢を使って「限定回答」にする :
*ほぼ毎日
*ほぼ毎日
*年に5回以上
*少なくとも年に 5 回
*年に1~4回
*年に 1 ~ 4 回
*ほとんどない
*ほとんどない


このデータは棒グラフで表現することができます。
このデータはきれいな棒グラフで表すことができます。


複数選択や択一の質問を作るときは、適切な方を選び、質問と回答を適切に組み立てます。
複数選択または単一選択の質問を扱う場合は、必ず適切な質問の種類を選択し、質問と選択肢の両方を適切に作成してください。


'''例:'''
'''例 : '''


<syntaxhighlight lang="php">次のフルーツのうち、どれが好きですか。
<syntaxhighlight lang="php">次のくだもののうち、どれが好きですか?
#りんご   ()
#りんご ()
#バナナ  ()
#バナナ ()
#チェリー ()</syntaxhighlight>
#さくらんぼ ()</syntaxhighlight>


これは、選択肢にの中に好きなものが複数あり得るので典型的な複数選択質問です。一方、"次のフルーツのうち、どれが一番好きですか。"は択一にすべき質問です。
上の例は、選択肢の中に好きなものが複数あり得るので、典型的な複数選択の質問です。一方、「次のくだもののうち、どれが一番好きですか?」は単一選択の質問です。


どちらのフルーツの例も、リストにあるフルーツだけについて明らかにするよう作られています。もし、"好きなフルーツは何か?"と聞くのであれば、フルーツを網羅したリストを作るか、より現実的には"その他"欄を設けます。一般的には、回答オプションは完全で重複がなく、明確でなければなりません。
どちらのくだものの例も、あなたの関心がリスト内のくだものだけにあることをはっきりさせるために定式化しています。「あなたの好きなくだものは何ですか?」と尋ねる場合は、くだものの完全なリストを用意するか、より一般的に、LimeSurvey の設定を使用して「その他」項目を追加する必要があります。一般的に、回答の選択肢は完全で、相互に排他的で、明確である必要があります。


多くの選択肢がある複数ないし択一の質問の場合、新たなバイアスが生じる可能性に注意すべきです。なぜなら、回答者は、リストの中程より最初の方に注目しがちだからです。LimeSurveyでは、この影響をある程度緩和するため、回答をランダム化することができます。
複数回答または単一回答の質問で、多数の選択肢から選択する場合、別のバイアスを生じる可能性について注意しなければなりません。参加者は中ほどの選択肢ではなく、最初の選択肢に注意をむけがちだからです。LimeSurvey には、質問の選択肢の順序をランダムにすることで、この問題をある程度解消する優れた設定を提供しています。


<span id="What_Makes_a_Good_Survey?"></span>
==どうしたらよいアンケートになるか?==
==どうしたらよいアンケートになるか?==


より正確な調査を行うために適切な回答を引き出すアンケートには3つの特徴があります。
正確な評価に欠かせない適切な回答を収集する、よいアンケートの特徴は 3 つあります:
# 質問が明確・正確で、全体として詳細・明瞭で意味のある回答が得られる。
# 質問は明確かつ正確で、詳細で明確かつ有意義な回答を可能にする。
# 提供される選択肢とフォーマットが適切である。
# すべて事前定義された選択肢が提供され、その形式は質問に適している。
# 必要に応じ、回答者が情報を追加できるようになっている。
# 必要に応じて追加情報を追加する余地がある。


更に、ユーザー体験を常に念頭に置きましょう。読むこと、スクロールすること、クリックすることは疲れる作業なので、
それにくわえて、ユーザーエクスペリエンスを常に考慮しましょう。読み、スクロールし、クリックするのは疲れる作業です。そのために… :
# 不必要な質問を避ける。
# 不必要な質問を避ける。
# 回答者によって関係ない質問をすることのないよう条件を使用する。
# 条件を使って、特定の回答者に関係ない質問を避ける。
# 質問・選択肢は、適切にマークアップし、短く読みやすくする。
# 質問・選択肢は短く・読みやすく。適切なマークアップを使用する。
# スクロールとクリックのトレードオフを考慮する。短いアンケート(質問の複雑さによるが、5-15問)は1ページに収めます。長いアンケートでは、グループをうまく使います。あとに続く質問のトピックについて明確に説明を加えます。
# スクロールとクリックのトレードオフを考慮する。短いアンケート(質問の複雑さによるが、5~15問程度)は 1 ページに表示する。長いアンケートではグループを賢く使う、つまり質問をわかりやすくグループ化する。グループの説明を使って、あとに続く質問の話題・テーマについて明確に説明を加える。
# 尺度を多用し、参加者を混乱させないようにします。利用する尺度のタイプ、スコープ、説明の数をできる限り制限します。尺度の方向を変えないようにします。(例外はあります)
# さまざまな異なるスケールで回答者を混乱させないようにする。つまり、スケールの種類、スケールの範囲、スケールの説明をできるかぎり制限する。スケールの方向を変えないように注意する(方法論的に例外はある)
# 採点尺度においては、下の例のように、尺度の数を偶数にして回答者がどちらかの方向を選ばなければならないようにすることも有効でしょう。
# 採点スケールの場合は、回答者の意思決定を容易にするために、選択肢を偶数にすることでいずれかの方向を選ばなければならないようにすると便利な場合がある(下記、参照)。


<syntaxhighlight lang="php">何かの''良さ''について聞く回答尺度のよい例:
<syntaxhighlight lang="php">いかに「いいか」の選択肢スケールの例 :


1. 非常によい
1. 非常によい
Line 190: Line 194:
6. 非常によくない
6. 非常によくない


何かの''悪さ''を聞く回答尺度の悪い例:
いかに「悪いか」の選択肢スケールの例 :


1. よい
1. よい


2. まあまあ
2. どちらでもない


3. よくない</syntaxhighlight>
3. よくない</syntaxhighlight>


アンケートの設計を始めるよい方法は、理想の回答がどのようなものか、少し考えてみることです。意味のある回答が最も有益であることは言うまでもないので、こうした回答を導く質問を作成してみてください。
アンケートの設計をはじめるベストな方法は、理想的な回答を、少し想像してみることです。意味のある回答が最も有益であることは言うまでもないので、そのような回答をうながす質問を作成するようにしてください。


どうしたらよいでしょうか。すべての領域を分割し、必要な情報は何かを決めることが最善の方法です。
そのためにはどうしたらよいでしょう? すべての領域を分離し、必要な情報は何かを決めることが最善の方法です。


例えば、イベントを開催し、イベントに関する一般的なフィードバックを得たいとします。
例えば、一般公開のイベントを開催し、そのイベントについての一般的なフィードバックを得る必要があるとします。


以下は、有用な回答を引き出せないかもしれないアンケートの例です。
次のアンケートは、有用な回答を引き出すのに不十分と思われるアンケートの例です。


<syntaxhighlight lang="php">イベントを楽しめましたか?
<syntaxhighlight lang="php">イベントは楽しかったですか?


( ) はい
( ) はい
Line 212: Line 216:
( ) いいえ
( ) いいえ


Wifiはよかったですか?
無線 LAN はどのくらい快適でしたか?


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Line 218: Line 222:
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )


無事にたどり着けましたか。
イベント会場に着くまでに問題はありましたか?


( ) はい
( ) はい
Line 224: Line 228:
( ) いいえ
( ) いいえ


提供された地図は役に立ちましたか。
配布した地図は役に立ちましたか?


( ) はい
( ) はい
Line 230: Line 234:
( ) いいえ
( ) いいえ


演者の構成はいかがでしたか。
出演者の組み合わせについてはどう思いましたか?


( ) とても残念 ( ) 残念 ( ) どちらでもない ( ) ハッピー ( ) とてもハッピー</syntaxhighlight>
( ) とても悲しい ( ) 悲しい ( ) どちらでもない ( ) 幸せ ( ) とても幸せ</syntaxhighlight>


上記のシナリオでは、配列質問を使うのが良いかもしれません。
上記のシナリオでは、配列回答の方が適しています。


==配列質問==
<span id="Matrix_Questions."></span>
==配列回答==


一般的に、尺度による質問は、年齢、時間、数量に関する質問にのみ使用すべきです。有用なフィードバックを得るためには、配列質問の文言は適切に表現すべきです。構成が適切でない場合、追加的な情報を収集することができないため、強制的な質問配列によって回答が抑制されてしまう可能性があることを覚えておいてください。  
原則として、スケールは年齢、時間等、または数量についての質問にだけ使うすべきです。有用なフィードバックを得るためには、配列回答の文言を適切にすべきです。配列回答は、構成が適切でないと追加的な情報を提供することができないため、回答者に抵抗を感じさせる場合もあることに注意してください。  


おそらく、アンケートを完了させようとしているならば、参加者はフィードバックをしたいと思っているでしょうが、有効な情報を共有したくないと思ったならば、ウィンドウを閉じてやめてしまうでしょう。
フィードバックを提供したいと考えて、アンケートに回答しようとしている人にとって、「役に立つ情報を共有できる」と思えなかったら、ウィンドウを閉じてアンケートから離れてしまうでしょう。


上記の例は何がよくないのでしょうか。
では、上記のアンケートの何がよくないのでしょうか?


ひとつひとつ見ていきましょう。
それぞれの質問を見ていきましょう。


'''質問1'''では何も得られません。100個の"いいえ"という回答が得られたらどうでしょう。この回答だけでは、参加者がなぜイベントを楽しめなかったのかについて、有益な情報を得ることができません。"いいえ"という回答に対し、理由を知りたくなるでしょうし、回答への対処に迷うことになるでしょう。のちほど、どのように改善できるかに触れます。
'''質問 1''' では実際には何も得られません。100 件の「いいえ」の回答を受けとったらどうでしょう? この回答だけでは、参加者がイベントを楽しめなかった理由について有益な情報を得られません。「いいえ」の回答の理由がわからず、また「いいえ」の回答をどうすればよいのか悩むことになるでしょう。改善点については後述します。


'''質問2'''は一つ目よりもひどいものです。先に触れた3つの特徴に立ち戻れば、この質問には明確さと正確さが必要です。Wifiの専門家でなくとも、これを計測するよりよい方法があります。さらに、"33%がWifiをよいと答えたと分かったとして、たったの23%がよいと答えた場合と比べ、何ができるか"のような問いに対し、有益な答えを得ることができません。よいアンケートの3つの特徴には、事前に定義された回答が質問に適合したものである必要がある、とあります。
'''質問 2''' は最初のものよりも悪いです。前のセクションの「よいアンケートの 3 つの特徴」を振り返ると、質問は明確かつ正確でなくてはなりません。私は無線 LAN の専門家ではありませんが、これを測定するよりよい方法はいくつもあることは間違いありません。さらに、「33% の人たちが『よい』と答えた場合と、それが23%だった場合と比べて、あなたがなすべき行動に違いはありますか?」といった問いに役に立つ答えは得られません。よいアンケートの 3 つの特徴には、すべて事前定義された選択肢が提供され、その形式は質問に適している、とも記されています。


この質問に尺度を使用しても、Wifiの品質を向上させることができないのは明らかです。この質問には、追加情報を入力できるスペースが必要です。具体的な問題について詳しい説明がないまま、報告することできるでしょうか。
この質問にスケールを使っても、無線 LAN の品質向上に役立たないことは明らかです。この質問には、回答者が追加情報を記入できる欄が必要です。どうやったら詳しい説明をせずに、具体的な問題を報告できるのでしょうか?


この場合、参加者がWi-Fiに関して抱えたいた問題に適切に対処するために十分な情報を得ることはほぼ不可能でしょう。アンケートは、行動したり学んだりするために有益な情報を得る行為です。
この例では、参加者が無線 LAN に抱えていた問題に適切に対処するための情報を得ることはほぼ不可能です。アンケートは、行動したり学んだりするために、役に立つ情報を得るものです。


'''質問3、4'''は、最初の2つの質問と同じ結果になります。これらの質問では、"はい"か"いいえ"でしか答えられず、どちらも詳細を追加することができません。このセクションの後に、こうした質問の改善方法に関する提案があります。
'''質問 3 と 4'''も、先の 2 つの質問と同じ結果になります。両者とも「はい」か「いいえ」でしか答えられず、どちらも詳細を追加することができません。このセクションの後に、こうした質問の改善方法を提案します。


最後の'''質問5'''も意味のない質問です。何かについての満足度を訪ねても、人によって関心が異なり、各自が講師に対し異なる意見を持っている可能性が高く、あまり有用ではありません。これは、使うべきでないところで"尺度"を使っているもう一つの例です。
最後の '''質問 5''' もまた意味のない質問です。何かの満足度を尋ねるのはあまり有益ではありません。なぜなら一人ひとり関心が異なり、全員が各講師に対して異なる意見を持っている可能性が高いからです。これは使うべきでないところで「スケール」を使っているもう一つの例です。


改善したアンケートを見てみましょう。
改善したアンケートを見てみましょう。


<syntaxhighlight lang="php">場内のWi-Fiを使いましたか?
<syntaxhighlight lang="php">場内の無線 LAN を使いましたか?


( ) はい
( ) はい
Line 266: Line 271:
( ) いいえ
( ) いいえ


何か問題はありましたか?
無線 LAN で問題が起きましたか?


( ) まったく問題ない
( ) まったく問題ない
Line 272: Line 277:
( ) 少々の問題はあったが、大したことはない
( ) 少々の問題はあったが、大したことはない


( ) いくつか深刻な問題があった
( ) いくつか重大な問題があった


( ) Wifiは使い物にならなかった
( ) 無線 LAN は使いものにならなかった


(問題があった方)簡単に状況をお聞かせください。(テキスト)
問題が発生した場合は、簡単な説明をお願いします。(テキストフィールド)


イベントに向かう上で問題はありましたか?
イベント会場に着くまでに問題はありましたか?


( ) はい
( ) はい
Line 286: Line 291:
会場にはどのように来ましたか?
会場にはどのように来ましたか?


( ) 鉄道
( ) JR


( ) 車
( ) 車
Line 292: Line 297:
( ) バス
( ) バス


( ) ライトレール(地下鉄、トラム)
( ) その他の鉄道(私鉄、地下鉄)


( ) 徒歩
( ) 徒歩


我々のウェブサイトの地図を使いましたか?
公式ウェブサイトの地図を使いましたか?


( ) はい
( ) はい
Line 302: Line 307:
( ) いいえ
( ) いいえ


地図をお使いの場合、十分な内容でしたか?
地図をご覧になって、十分詳細に記載されていましたか?


( ) はい
( ) はい


( ) 大まかな情報は得られたが、別の詳しい地図を使った
( ) 大まかな情報は得られたが、詳細は別の地図を使った


( ) 不十分だった
( ) 不十分だった


(地図を使わなかった方)なぜ地図を使わなかったのですか?
公式サイトの地図を使わなかった方は、なぜ使わなかったのですか?


( ) 不十分だったから
( ) 詳細が不十分だったから


( ) 代わりにGoogle mapsを使った
( ) iPhone のマップ・Google マップ を使った


( ) 地図があることを知らなかった
( ) 地図があることを知らなかった!


全体として、講演はいかがでしたか?楽しめましたか?
全体として、講演者はおもしろかったですか? スライドは楽しめましたか?


( ) ほとんどが興味深く、楽しめるものだった
( ) ほとんどが興味深く、とても楽しかった


( ) 大体楽しめたが、つまらないものもあった
( ) 大体楽しめたが、つまらないものもあった
Line 326: Line 331:
( ) 半々だった
( ) 半々だった


( ) 退屈だった
( ) おもしろいよりも退屈な方が長かった


( ) 興味を引くものはまったくなかった
( ) おもしろいものはまったくなかった


上記の答えについて詳しくお聞かせください。具体例(講師、項目)があれば遠慮なくお書きください。
上記の質問に対する答えについて、詳しくお聞かせください。どのようなことでも、ご自由にご参照ください。


(テキスト)
特定の人・話の内容について。 (テキストフィールド)


講演内容について改善すべき点があればお書きください。
話題の範囲の改善点、またはその他の興味深いアイディア


(テキスト)
講演内容について。以下にリスト(テキストフィールド)


その他、ご意見があればお聞かせください。(テキスト)</syntaxhighlight>
その他、ご要望やご意見があれば、以下にお書きください。 (テキストフィールド)</syntaxhighlight>


少し長いアンケートになりましたが、回答するのも回答を解釈するのも容易になりました。それぞれのトピックについていくつか聞くことにより、結果を処理する際により詳しく分析できるようになります。例えば、最初のアンケートの質問に対し、30人がイベントに向かう上で何らかの問題があったと回答したとします。
アンケートは少し長くなりましたが、回答するのも回答を解釈するのも、はるかに容易になりました。話題・テーマごとに 2 ~ 3 の聞くことにより、結果を処理する際により詳しく分析できるようになります。例えば、最初のアンケートの質問で、30人がイベント会場に着くまでに何らかの問題があったと回答したとします。


これは、結果から得られる情報ですが、新たな回答セットによってどの交通手段に問題があったのかを推測することが可能になります。さらに、提供した地図を使ったか、あるいは別の案内を利用していたかがわかり、将来の改善につなげることができます。
これが結果から得られるかぎりの情報でしたが、新たな選択肢のセットで、どの交通手段に問題があったのかを推測することができます。さらに、参加者が提供した地図を使ったか、あるいは別の地図やアプリを利用したかがわかり、今後の改善の対象にすることもできます。


'''質問が50を超える場合、参加者は問題を読むのをやめてしまう可能性が高いことに注意してください。'''
'''50 個の質問に回答を終えると、参加者はもう読むのをやめてしまう可能性が高くなります。お忘れなく。'''


新たに加えたテキスト質問も重要です。参加者から具体的なフィードバックを得ることができます。回答を必須にしてしまうと、アンケートの回答をやめてしまうかもしれないので、回答は任意とするのがよいでしょう。
テキストフィールドの質問(記述回答)を新たに加えたことも重要です。参加者が具体的なフィードバックを提供し、これを参考にできるようになりました。必須項目にすると回答そのものをやめてしまうかもしれないので、任意とするのがよいでしょう。


最後に、アンケートを作成するときは、分析に役立つ情報をより多く得るため、具体的なことを聞くアンケートにする必要があります。また、追加でバックグラウンド情報を集めることにより、回答についてよりよい分析ができるということを覚えておきましょう。
結論として、アンケートを作成するときは、分析により役立つ情報を多く得るため、具体的な質問をするアンケートにすることをめざす必要があります。また、わずかでも追加的な背景情報を収集すると、回答のよりよい分析に役立つ手助けとなることも覚えておきましょう。


また、質問の言葉遣いを適切にすることも重要です。質問に答えようとしていても、それを理解できなければウィンドウを閉じて行ってしまいます。可能であれば、一般公開する前に他の人にアンケートを校正してもらい、質問が明確になっているか確認します。
質問を適切に表現することも重要です。質問に答えようとしていても、質問を理解できなければウィンドウを閉じて行ってしまいます。できるだけアンケートを公開する前に、質問が明確であるかどうか、他の人に校正してもらってください。


<span id="Survey_Bias"></span>
==アンケートのバイアス==
==アンケートのバイアス==


市場調査を実施するうえで、偏りのない回答を得るためには、アンケート参加者の回答に影響を与える可能性のある質問を避けることが重要です。アンケートの偏りを避けることにより、無効な回答や、ゆがんだデータ収集を排除できます。
市場調査を実施する際、偏りのない回答を得るための重要なカギは、アンケート参加者の回答に影響を与える可能性のある質問を避けることです。アンケートのバイアス(偏り・先入観)を避けることで、役に立たないゆがんだデータ収集につながる回答を排除できます。
市場調査に関する適切な研修や知識を受けていない企業や個人は、このようなミスを犯しがちです。これは、質問の言葉遣い、選択できる回答の種類、電話や対面でデータを収集している場合にインタビュアーがどのように質問を提示するかなど、多くのことに当てはまります。
適切な市場調査の訓練や知識のない企業や個人は、こうしたミスを犯しがちです。質問の表現、選択肢の内容や種類、また電話や対面での場合のインタビュアー(質問者)の質問のしかたなど、さまざまなことがその要因となります。




バイアスがかかった質問の例は、以下のようなものです。
バイアスがかかった質問の例 :


<syntaxhighlight lang="php">イベントはどの程度楽しめましたか?
<syntaxhighlight lang="php">イベントはどの程度楽しかったですか?


( )とても楽しめた
( )とても楽しかった


( )少し楽しめた
( )少し楽しかった


( )あまり楽しめなかった
( )それほど楽しくなかった


( )まったく楽しめなかった</syntaxhighlight>
( )まったく楽しくなかった</syntaxhighlight>


一見すると、質問の構造に問題はなさそうです。実際、回答者は、"とても楽しめた"から"まったく楽しめなかった"までの答えを選ぶことができます。しかし、質問の言い回しに問題があります。"どの程度"楽しめたか、と聞くことによって、そのアンケートはすでに、回答者は何らかの形でイベントを楽しんだと想定している、というバイアスがかかっていますが、そうではないかもしれません。
一見すると、この質問の構造に問題はなさそうです。全体として、回答者に「とても楽しめた」から「まったく楽しめなかった」までの範囲で選択肢が用意されています。しかし、問題は質問の表現です。参加者にイベントを「どの程度'''楽しかったか'''」と聞くことで、参加者が程度の差はあれ'''楽しかった'''と仮定しており、バイアスを発生させています。実際は楽しくなかった可能性もあるのに。


次の例は、参加者の回答に影響を与えない、よりよい聞き方です。
参加者の回答に影響を与えない、よりよい質問の例 :


<div class="mw-translate-fuzzy">
<syntaxhighlight lang="php">全体的としてのイベントの楽しさを 1 ~ 5 で評価してください : 1 =「まったく楽しくなかった」、5 =「とても楽しかった」
<syntaxhighlight lang="php" enclose="div">イベントの全体的な娯楽性について1から5で評価してください。1は"まったく楽しめなかった"、5は"とても楽しめた"とします。
</div>


1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
Line 382: Line 386:
( ) ( ) ( ) ( ) ( )</syntaxhighlight>
( ) ( ) ( ) ( ) ( )</syntaxhighlight>


質問の言い回しを変えることによって、回答者は楽しんだレベルを決めやすい尺度を使って回答することができ、アンケートを行う側は他の回答結果とともに集計し比較することができます。もちろん、参加者が何を楽しめたのか、楽しめなかったのかを具体的に聞くには、もっと質問を増やす必要があります。
質問文の表現を変え、スケールで回答するようにしたことで、回答する側は楽しさのレベルを決めやすくなり、アンケートを実施する側は結果を集計したり他の回答結果と比較したりといったことがやりやすくなりました。もちろん、参加者にとって何が楽しかったのか・楽しくなかったのかを具体的に聞くの質問をさらに増やすべきでしょう。


これは、言葉遣いをわずかに変えることによってアンケートの改善につながる例です。
これは、文言を少し変更することでアンケートがどのように改善されるかを示す一例にすぎません。

Latest revision as of 00:44, 13 April 2024

よいアンケートを作るための簡単なガイド

LimeSurvey を使えば、アンケートをすばやく簡単に作成できます。残念ながら、そのせいで悪いアンケートを作るのも、とても簡単になってしまいます。

このページには、回答者が簡単に完了できるだけでなく、集計する側が意味のある回答を得られるアンケートをまとめるための簡単なガイドを記載しています。

ブログ、「Survey design tips & tricks(アンケートデザインのコツと技)」では、この他のとても役に立つ情報を掲載しています。

アンケートを作る前に

最初にいくつか質問します。どんなアンケートでも作りはじめる前に考えておいてほしいことです。そもそもアンケートが適切な方法なのかも含めて。

アンケートで本当に知りたいことは何ですか?

この質問に答えた上で、次の点について考えてください。

  • アンケートで調査に必要な情報を得られるか?
  • どんな人物にアンケートに回答してもらうのが適切か?
  • 適切な人たちにどうすればコンタクトできるか?
  • 参加者がアンケートの質問を完璧に理解したうえで回答を完了するための最適な方法は?(得た情報が正確・有用であるために)
  • (データ分析の)統計的手法について、収集したデータにどれを用いたい、もしくは用いる必要があるか?


こうした質問・確認は、LimeSurvey が最適な道具かどうかを判断する際にはっきりさせておくべき点のほんの一部です。

完全に構造化されたアンケート(面談をはじめる前に尋ねるべき質問がすべてわかっている)、標準化されたアンケート(全員がほぼ同じ質問を受ける)、ほとんど定量的なアンケート(質問項目が主に数字や、事前に選択肢が定まったもの)…LimeSurvey はこうしたアンケートをオンラインで収集するのに最適です。


もちろん、ある程度はこの限りではありません。 LimeSurvey はいくつかの種類の電話での聞き取りの回答を収集するのにも使えます。 LimeSurvey で記述型の質問などの定性的なデータを収集することもできます。

しかし、ある時点で、他の調査方法の方が適しているという結論になるかもしれません。

アンケートの構成

質問の順序をどうするか、どう質問をグループ化するかを決めるには、考えるべき点があります。

なるべく、はじめは答えるのが簡単で、参加者全員が答えるのに不快と感じない質問から尋ねます。こうした質問は、よくスクリーニング(ふるい分け)の質問として使われます。つまり、適切な人に回答してもらうための確認として用いる質問です(こうしたスクリーニングの質問を取り扱うには、条件割り当て のいずれか、または両方を使います)。

最初にこの種の質問をすると、参加者がアンケートの回答を完了する前に離れてしまうのを防ぐことができます。こうした導入・スクリーニングの質問に答える労力をすでに費やしてしまったことで、多くの人は作業を中断する可能性が低くなるからです。

:

次のくだもののうち、どれが好きですか?
#りんご()
#バナナ ()
#さくらんぼ ()

(単一回答)

条件を使うと、参加者が「さくらんぼ」を選択したら、次にさくらんぼについての質問を表示するように設定できます。

なぜ、さくらんぼが好きなのですか?
#おいしいから
#色が大好きだから
#健康的だから
#みずみずしいから
#チェリーパイが大好きだから

(複数回答――正確なデータが必要であれば単一回答――の質問)

さくらんぼは、どのくらい好きですか?
#1) 他のくだものほど好きではない
#2) 他のくだものよりも好き
#3) 大好きなくだものの1つ!
#4) さくらんぼが大好きだ~っ!!!

(単一回答)

さくらんぼを使ったレシピを何か知っていますか?

[記述]

上記は、つづくメインの質問への導入として配置する簡単な質問の例です。

目的は、さくらんぼ、りんご、バナナを使ったレシピを集めることにあります。

一方、ハードな質問を尋ねなければならない場合は、質問や質問グループごとにページを改めたり、最後にそのような質問をすることを考えてもいいかもしれません。こうすれば、もし参加者がアンケートを完了しなかったとしても、少なくともそれまでの回答は保存されます。

構成について考えるべきその他の点 - アンケート自体がもたらすバイアス(先入観や刷り込み)を避けること。

たとえば市場調査では、補助なしの質問と補助ありの質問を必要とする概念があります。

補助なしの質問の例は次のとおり :

「あなたが知っているチョコレートのブランドは何ですか?」

(つづいて空白のテキストボックス)

以下は、補助ありの質問の例 :

「次のチョコレートのブランドのうち知っているのはどれですか?」

(つづいてブランドのリスト・複数回答)

前述したように、両方のタイプの質問(補助ありと補助なし) を同じアンケートに含めることを選んだ場合は、両者を必ず別のページに配置し、補助なしの質問を補助ありの質問の前に配置しなくてはなりません。補助ありの質問を補助なしの質問の前に置くと、参加者の回答に無意識に影響を与え、結果が無効になるかもしれません。

独立した質問

質問は示唆的であってはなりません。「LimeSurveyについてどう思いますか?」は、承認できる(示唆的ではない)質問です。一方、「LimeSurvey が本当にすばらしいツールであることに同意しませんか?」は示唆的な質問です。

質問の表現に関するその他の例と提案 :

次のように質問すると、多くの人は寄付に「はい」と答えるかもしれません:

  • 「自然は好きですか?」
  • 「川を守るために寄付しませんか?」


次のように質問すると、多くの人はおそらく「いいえ」と答えるでしょう :

  • 「お金が足りなくて悩んでいますか?」
  • 「川を守るために寄付しませんか?」


適切な回答を求めるために、質問の順序を次のようにします :

  • 当たり障りのないものからセンシティブ(敏感)なものへ
  • 一般的なものからより具体的なものへ
  • 事実についての質問から意見を聞く質問へ

また、アンケートの質問は以下の通り大別できます :

  • 自由回答 (回答者が自分の言葉で回答)
  • 限定回答 (限られた数の選択肢から選ぶ)

限定回答は、分析がはるかに簡単ですが、回答者が本当に望む選択肢を用意できないかもしれません。

例 : 「好きな色は何ですか?」

自由回答: 「ダークフューシャ」と答える人がいるかもしれません。結果に「ダークフューシャ」の分類を作らなければなりません。

限定回答: 12種類の色から選ばせれば集計は楽です。しかし、回答者が本当に好きな色を選べないかもしれません。

各々の質問を慎重に検討し、自由回答にするか、限定回答にするかを決定します。回答についてより深い洞察が必要な場合は、自由回答の質問を使用してください。そうでない場合は、限定回答の質問を使用します。

例(自由回答) : 「川をきれいにする最善の方法は何だと思いますか?」

「自由回答」にする : 回答を表やグラフにまとめるのは簡単ではないでしょう。しかし、川や環境の浄化に対する人びとの感情や考えについて深い洞察が得られ、レポートに直接引用できるかもしれません。

例(限定回答) : 「どのくらいの頻度で川に行きますか?」

次の選択肢を使って「限定回答」にする :

  • ほぼ毎日
  • 少なくとも年に 5 回
  • 年に 1 ~ 4 回
  • ほとんどない

このデータはきれいな棒グラフで表すことができます。

複数選択または単一選択の質問を扱う場合は、必ず適切な質問の種類を選択し、質問と選択肢の両方を適切に作成してください。

例 :

次のくだもののうち、どれが好きですか?
#りんご ()
#バナナ ()
#さくらんぼ ()

上の例は、選択肢の中に好きなものが複数あり得るので、典型的な複数選択の質問です。一方、「次のくだもののうち、どれが一番好きですか?」は単一選択の質問です。

どちらのくだものの例も、あなたの関心がリスト内のくだものだけにあることをはっきりさせるために定式化しています。「あなたの好きなくだものは何ですか?」と尋ねる場合は、くだものの完全なリストを用意するか、より一般的に、LimeSurvey の設定を使用して「その他」項目を追加する必要があります。一般的に、回答の選択肢は完全で、相互に排他的で、明確である必要があります。

複数回答または単一回答の質問で、多数の選択肢から選択する場合、別のバイアスを生じる可能性について注意しなければなりません。参加者は中ほどの選択肢ではなく、最初の選択肢に注意をむけがちだからです。LimeSurvey には、質問の選択肢の順序をランダムにすることで、この問題をある程度解消する優れた設定を提供しています。

どうしたらよいアンケートになるか?

正確な評価に欠かせない適切な回答を収集する、よいアンケートの特徴は 3 つあります:

  1. 質問は明確かつ正確で、詳細で明確かつ有意義な回答を可能にする。
  2. すべて事前定義された選択肢が提供され、その形式は質問に適している。
  3. 必要に応じて追加情報を追加する余地がある。

それにくわえて、ユーザーエクスペリエンスを常に考慮しましょう。読み、スクロールし、クリックするのは疲れる作業です。そのために… :

  1. 不必要な質問を避ける。
  2. 条件を使って、特定の回答者に関係ない質問を避ける。
  3. 質問・選択肢は短く・読みやすく。適切なマークアップを使用する。
  4. スクロールとクリックのトレードオフを考慮する。短いアンケート(質問の複雑さによるが、5~15問程度)は 1 ページに表示する。長いアンケートではグループを賢く使う、つまり質問をわかりやすくグループ化する。グループの説明を使って、あとに続く質問の話題・テーマについて明確に説明を加える。
  5. さまざまな異なるスケールで回答者を混乱させないようにする。つまり、スケールの種類、スケールの範囲、スケールの説明をできるかぎり制限する。スケールの方向を変えないように注意する(方法論的に例外はある)
  6. 採点スケールの場合は、回答者の意思決定を容易にするために、選択肢を偶数にすることでいずれかの方向を選ばなければならないようにすると便利な場合がある(下記、参照)。
いかに「いいか」の選択肢スケールの例 :

1. 非常によい

2. よい

3. 少しだけよい

4. あまりよくない

5. よくない

6. 非常によくない

いかに「悪いか」の選択肢スケールの例 :

1. よい

2. どちらでもない

3. よくない

アンケートの設計をはじめるベストな方法は、理想的な回答を、少し想像してみることです。意味のある回答が最も有益であることは言うまでもないので、そのような回答をうながす質問を作成するようにしてください。

そのためにはどうしたらよいでしょう? すべての領域を分離し、必要な情報は何かを決めることが最善の方法です。

例えば、一般公開のイベントを開催し、そのイベントについての一般的なフィードバックを得る必要があるとします。

次のアンケートは、有用な回答を引き出すのに不十分と思われるアンケートの例です。

イベントは楽しかったですか?

( ) はい

( ) いいえ

無線 LAN はどのくらい快適でしたか?

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

イベント会場に着くまでに問題はありましたか?

( ) はい

( ) いいえ

配布した地図は役に立ちましたか?

( ) はい

( ) いいえ

出演者の組み合わせについてはどう思いましたか?

( ) とても悲しい ( ) 悲しい ( ) どちらでもない ( ) 幸せ ( ) とても幸せ

上記のシナリオでは、配列回答の方が適しています。

配列回答

原則として、スケールは年齢、時間等、または数量についての質問にだけ使うすべきです。有用なフィードバックを得るためには、配列回答の文言を適切にすべきです。配列回答は、構成が適切でないと追加的な情報を提供することができないため、回答者に抵抗を感じさせる場合もあることに注意してください。

フィードバックを提供したいと考えて、アンケートに回答しようとしている人にとって、「役に立つ情報を共有できる」と思えなかったら、ウィンドウを閉じてアンケートから離れてしまうでしょう。

では、上記のアンケートの何がよくないのでしょうか?

それぞれの質問を見ていきましょう。

質問 1 では実際には何も得られません。100 件の「いいえ」の回答を受けとったらどうでしょう? この回答だけでは、参加者がイベントを楽しめなかった理由について有益な情報を得られません。「いいえ」の回答の理由がわからず、また「いいえ」の回答をどうすればよいのか悩むことになるでしょう。改善点については後述します。

質問 2 は最初のものよりも悪いです。前のセクションの「よいアンケートの 3 つの特徴」を振り返ると、質問は明確かつ正確でなくてはなりません。私は無線 LAN の専門家ではありませんが、これを測定するよりよい方法はいくつもあることは間違いありません。さらに、「33% の人たちが『よい』と答えた場合と、それが23%だった場合と比べて、あなたがなすべき行動に違いはありますか?」といった問いに役に立つ答えは得られません。よいアンケートの 3 つの特徴には、すべて事前定義された選択肢が提供され、その形式は質問に適している、とも記されています。

この質問にスケールを使っても、無線 LAN の品質向上に役立たないことは明らかです。この質問には、回答者が追加情報を記入できる欄が必要です。どうやったら詳しい説明をせずに、具体的な問題を報告できるのでしょうか?

この例では、参加者が無線 LAN に抱えていた問題に適切に対処するための情報を得ることはほぼ不可能です。アンケートは、行動したり学んだりするために、役に立つ情報を得るものです。

質問 3 と 4も、先の 2 つの質問と同じ結果になります。両者とも「はい」か「いいえ」でしか答えられず、どちらも詳細を追加することができません。このセクションの後に、こうした質問の改善方法を提案します。

最後の 質問 5 もまた意味のない質問です。何かの満足度を尋ねるのはあまり有益ではありません。なぜなら一人ひとり関心が異なり、全員が各講師に対して異なる意見を持っている可能性が高いからです。これは使うべきでないところで「スケール」を使っているもう一つの例です。

改善したアンケートを見てみましょう。

場内の無線 LAN を使いましたか?

( ) はい

( ) いいえ

無線 LAN で問題が起きましたか?

( ) まったく問題ない

( ) 少々の問題はあったが、大したことはない

( ) いくつか重大な問題があった

( ) 無線 LAN は使いものにならなかった

問題が発生した場合は、簡単な説明をお願いします。(テキストフィールド)

イベント会場に着くまでに問題はありましたか?

( ) はい

( ) いいえ

会場にはどのように来ましたか?

( ) JR

( ) 

( ) バス

( ) その他の鉄道(私鉄、地下鉄)

( ) 徒歩

公式ウェブサイトの地図を使いましたか?

( ) はい

( ) いいえ

地図をご覧になって、十分詳細に記載されていましたか?

( ) はい

( ) 大まかな情報は得られたが、詳細は別の地図を使った

( ) 不十分だった

公式サイトの地図を使わなかった方は、なぜ使わなかったのですか?

( ) 詳細が不十分だったから

( ) iPhone のマップ・Google マップ を使った

( ) 地図があることを知らなかった!

全体として、講演者はおもしろかったですか? スライドは楽しめましたか?

( ) ほとんどが興味深く、とても楽しかった

( ) 大体楽しめたが、つまらないものもあった

( ) 半々だった

( ) おもしろいよりも退屈な方が長かった

( ) おもしろいものはまったくなかった

上記の質問に対する答えについて、詳しくお聞かせください。どのようなことでも、ご自由にご参照ください。

特定の人・話の内容について。 (テキストフィールド)

話題の範囲の改善点、またはその他の興味深いアイディア

講演内容について。以下にリスト(テキストフィールド)

その他、ご要望やご意見があれば、以下にお書きください。 (テキストフィールド)

アンケートは少し長くなりましたが、回答するのも回答を解釈するのも、はるかに容易になりました。話題・テーマごとに 2 ~ 3 の聞くことにより、結果を処理する際により詳しく分析できるようになります。例えば、最初のアンケートの質問で、30人がイベント会場に着くまでに何らかの問題があったと回答したとします。

これが結果から得られるかぎりの情報でしたが、新たな選択肢のセットで、どの交通手段に問題があったのかを推測することができます。さらに、参加者が提供した地図を使ったか、あるいは別の地図やアプリを利用したかがわかり、今後の改善の対象にすることもできます。

50 個の質問に回答を終えると、参加者はもう読むのをやめてしまう可能性が高くなります。お忘れなく。

テキストフィールドの質問(記述回答)を新たに加えたことも重要です。参加者が具体的なフィードバックを提供し、これを参考にできるようになりました。必須項目にすると回答そのものをやめてしまうかもしれないので、任意とするのがよいでしょう。

結論として、アンケートを作成するときは、分析により役立つ情報を多く得るため、具体的な質問をするアンケートにすることをめざす必要があります。また、わずかでも追加的な背景情報を収集すると、回答のよりよい分析に役立つ手助けとなることも覚えておきましょう。

質問を適切に表現することも重要です。質問に答えようとしていても、質問を理解できなければウィンドウを閉じて行ってしまいます。できるだけアンケートを公開する前に、質問が明確であるかどうか、他の人に校正してもらってください。

アンケートのバイアス

市場調査を実施する際、偏りのない回答を得るための重要なカギは、アンケート参加者の回答に影響を与える可能性のある質問を避けることです。アンケートのバイアス(偏り・先入観)を避けることで、役に立たないゆがんだデータ収集につながる回答を排除できます。 適切な市場調査の訓練や知識のない企業や個人は、こうしたミスを犯しがちです。質問の表現、選択肢の内容や種類、また電話や対面での場合のインタビュアー(質問者)の質問のしかたなど、さまざまなことがその要因となります。


バイアスがかかった質問の例 :

イベントはどの程度楽しかったですか?

( )とても楽しかった

( )少し楽しかった

( )それほど楽しくなかった

( )まったく楽しくなかった

一見すると、この質問の構造に問題はなさそうです。全体として、回答者に「とても楽しめた」から「まったく楽しめなかった」までの範囲で選択肢が用意されています。しかし、問題は質問の表現です。参加者にイベントを「どの程度楽しかったか」と聞くことで、参加者が程度の差はあれ楽しかったと仮定しており、バイアスを発生させています。実際は楽しくなかった可能性もあるのに。

参加者の回答に影響を与えない、よりよい質問の例 :

全体的としてのイベントの楽しさを 1  5 で評価してください : 1 =「まったく楽しくなかった」、5 =「とても楽しかった」

1 2 3 4 5

( ) ( ) ( ) ( ) ( )

質問文の表現を変え、スケールで回答するようにしたことで、回答する側は楽しさのレベルを決めやすくなり、アンケートを実施する側は結果を集計したり他の回答結果と比較したりといったことがやりやすくなりました。もちろん、参加者にとって何が楽しかったのか・楽しくなかったのかを具体的に聞くの質問をさらに増やすべきでしょう。

これは、文言を少し変更することでアンケートがどのように改善されるかを示す一例にすぎません。